マイクロ法人に税理士は必要か

マイクロ法人の経理の特徴

マイクロ法人とは、社長一人だけの会社です。フリーランスが法人化する場合や資産運用会社としてよく利用されます。一人だけなので、それほど取引量が多くないので記帳の量も少なく、高度な経理・税務処理が少ないという特徴があります。

 マイクロ法人の経理や税務は、以下のように言われることがあります。

「簡単だから、誰でもできる。」

「簡単だから、税理士など使う費用はない。」

「昨今の会計ソフトは高性能だから、自分一人で記帳から税務申告までできる。」

 しかし、本当にそうでしょうか。

会計ソフトを持っていても、税務申告はできない

 一般的な会計ソフトは、freee、MFクラウド、弥生会計等も含めて、経理業務(記帳)には対応していますが、会計ソフトでは法人税の申告はできません

 このため別途税務申告用のソフトを買って、自分で申告をしないといけません。「自分一人で記帳から税務申告までできる」という人もいるとは思いますが、実は「記帳はできるが、税務申告はできない」という人が殆どではないでしょうか。

自分でやった記帳と申告の結果が正しかったかどうかは税務調査が入るまで分からない

 インターネット等で、「自分一人で記帳ができたし、税務申告もできた。」という意見もよく聞きます。

 しかし、その結果が正しかったかどうかの答え合わせがされてないまま、「自分一人でできた」と言っている人も多いのではないでしょうか。

 というのも、答え合わせは、税務調査が入るまでわからないからです。税務調査は3~5年に1回のペースで入りますし、規模が小さい場合はもっと遅くなる場合もあります。まだ答え合わせをしていない状態で、正しい記帳、申告が自分でできたと思い込んでいるだけの可能性がありますので、インターネットの個人の感想は割り引いて理解した方がいいでしょう。

税務申告以外に、必要な届出がある

 会計ソフトへの記帳と確定申告以外にも、各種届出が必要になる場合があります。特に消費税の場合は、敢えて免税事業者から課税事業者を選択することで還付を受けることができる場合もある等、シビアな判断が求められます。他にも、eBayやAmazonなどで海外に商品を輸出している会社の場合は、通常年1回の消費税の還付を受けることしかできませんが、届出を出すことで最短で毎月還付を受けることが可能となります。

 このような届出を自分で探して、自分で書くのは困難なので顧問税理士を活用した方がいいでしょう。

税務調査が入るのが決まってから税理士を探しても遅い

 普段から顧問税理士がいれば、税務署から税務調査の連絡が入ったとしてもすぐに対応してもらえます。しかし、顧問税理士がいない場合、連絡が入ってから調査対応してくれる税理士を見つけなければなりません。仮に事後的に見つけることができたとしても、その税理士からすれば、今まで自分がかかわっておらず、自分自身の責任が問われることがない会社のことですから、(プロとしては本来はだめなのですが)どうしてもひとごと感は出てしまうことでしょう。税理士自身も、納税者と同様に緊張感を持って対応してもらうには、普段から顧問としていてもらった方がいいでしょう。

自分で記帳・申告をやるならどのソフトがいいか

 以上のことから、可能なら記帳は自分でやった方がいいけれど、税務申告・税務顧問は税理士にお願いするというのが、マイクロ法人にとって理想だと思います。記帳を自分でやれば、その分税理士報酬は安くなります。

 この場合、どのようなソフトを使えばいいのかが問題になります。

 会計ソフトは、クラウド会計ソフトしか考えられないでしょう。

 弥生会計、freee、MFクラウドのいずれかなら問題はないでしょう。安さで選ぶならfreeeが一番かと思います。

 税務申告ソフトは、税理士を使うなら不要ですが、(おすすめはしませんが)自分でやるなら会計ソフトとの連携を確認して購入すべきです

 多くの税務申告ソフトは、特定の会計ソフトと連携しており、会計ソフトのデータを税務申告ソフトに流し込むことで半自動的に税務申告書の作成ができるようになっています。

 このため、安いからと言って安易に税務申告ソフトを選んだ結果、会計との連携ができないといった事例があるので注意が必要です。

税理士費用はどれくらいか

 マイクロ法人で売上1000万円以下なら、記帳なしで20万円くらい、記帳ありで30万円くらいが相場です。自分で記帳するだけでだいぶコストを下げられるので、自ら記帳するのがおススメです。

まとめ

 税務申告、税務調査のためには、マイクロ法人であっても税理士は必要でしょう。しかし、マイクロ法人レベルなら会計記帳は自分でできるので、記帳は自分でやって税理士報酬を減らすのが、最もコスパのいい契約方法だと思います。

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著者:税理士 鈴木 康寛

マイクロクラウド会計事務所所長似顔絵

大手監査法人在籍中に上場準備企業に出向して上場準備業務に従事、上場に成功。その後、上場企業の財務経理部門を経て独立開業する。自らもマイクロ法人を設立した経験を活かし『全ての人にマイクロ法人を』をモットーにマイクロ法人の素晴らしさを啓蒙中。

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