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企業型確定拠出年金で節税は本当か?
確定拠出年金とは
マイクロ法人の節税策として、企業型確定拠出年金が挙げられることがあります。そもそも確定拠出年金とは、老後に自分が受け取る「年金」の「拠出」額を、今拠出した金額で「確定」し、将来の「給付」額はその後の運用次第で変動するというものです。
確定拠出年金には、個人型と企業型があり、個人型はいわゆるイデコのことです。企業型は、従業員・役員個人ではなく企業が主体となって、従業員・役員のために拠出を行うタイプです。あくまで企業が従業員・役員のためにやるものであり、企業が拠出した積立金は従業員・役員のものです。そのため、企業から見れば拠出額は資産ではないので、拠出時に全額損金(経費)になります。
マイクロ法人が企業型確定拠出年金に加入し、役員のために毎月拠出をすると拠出額は経費になるので法人税を減少させます。経費になるという意味では役員報酬として払っても同じなので、企業型確定拠出年金を使っても法人にかかる税金は変わりません。
しかし、企業型確定拠出年金に基づく拠出額は、実質的には役員への将来の年金の給付を行っているにもかかわらず、社会保険料がかからないのです。これは、法人負担の社会保険料だけではなく、役員個人負担分にもかかりません。役員報酬として払ったのであれば、法人・個人それぞれ役員報酬の15%近くの社会保険料がかかるのに、それがかからないのでメリットは大きいです。また、同様に、個人所得税・住民税もかかりません。
これらをまとめると、以下の表のようになります。
役員報酬として支給 | 企業型確定拠出年金として支給 | |
法人税 | 経費になる→法人税を減らせる | 経費になる→法人税を減らせる |
所得税・住民税 | 発生 | 発生しない |
社会保険料(会社負担分) | 発生 | 発生しない |
社会保険料(本人負担分) | 発生 | 発生しない |
拠出上限額
なお、企業型確定拠出年金の拠出上限額は月55,000円であり、無制限ではありません。但し、個人型確定拠出年金イデコを使って個人で拠出した場合の上限額は、マイクロ法人の役員(厚生年金加入)の場合は月23,000円ですので、企業型確定拠出年金に加入することで拠出上限額をアップさせる効果があります。 ちなみに、個人事業主一本の場合は厚生年金に加入せず国民年金に加入することになるので、その場合のイデコの拠出上限は月68,000円です。個人事業主をやめてマイクロ法人化し厚生年金に加入してから企業型確定拠出年金を使った場合の上限が55,000円ですから、それと比べると拠出上限は減少します。
働き方 | 加入公的年金の種類 | イデコor | 月の拠出上限額 |
企業型 | |||
マイクロ 法人の役員 |
一定の役員報酬あり ↓ 厚生年金 |
イデコ | 23,000円 |
マイクロ 法人の役員 |
一定の役員報酬あり ↓ 厚生年金 |
企業型 確定拠出 年金 |
55,000円 |
マイクロ 法人の役員 |
一定の役員報酬なし ↓ 国民年金 |
イデコ | 68,000円 |
個人事業主一本 | 国民年金 | イデコ | 68,000円 |
実質、手数料が高い証券投資?
一見有利そうな企業型確定拠出年金ですが、証券会社に払う企業型確定拠出年金の導入手数料と維持手数料が高いことがネックです。例えば、SBI証券だと初年度で年187,220円、次年度以降毎年73,920円がかかります(ネットで簡単に検索できます)。SBI証券は業界でも最安値でサービスを提供していることを考えると、他の証券会社での費用もこれと同等又はそれ以上と考えて差し支えないでしょう。
また、企業型確定拠出年金は一度初めてしまうと基本的にやめることができません。さらに、社宅と異なり、法人から役員に供与されるものは老後の年金の積立金であり、今すぐ何らかの利益がもたらされるものでもありません。手数料の高い株式投資だと考えれば、それほどお得とは言えないのではないでしょうか。
結論
よほど株式投資に意欲がある人や投資に回す個人の手元資金が無い人ならともかく、既に貯金してある個人の余裕資金を使ってイデコやNISAで投資を行った方が健全だと思います。
なお、似たような制度で導入コストが低いイデコプラスというものもあります。簡単に言うと、個人で払っているイデコの拠出額を、代わりに法人が払うというものです。ただ、拠出上限額はイデコと同じなので金額的な影響力は大きくなく、わざわざ手間をかけてまでやるだけの価値はないでしょう。
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