役員社宅節税の落し穴 1契約、2初期費用、3連帯保証人
役員社宅節税は一度導入してしまえば効果絶大かつ、その後も特に手間がかからないことは前記事で述べました。役員社宅節税の概要については別記事を参照してください。
さて、本記事では具体的に落とし穴1~3について解説したいと思います。
落とし穴1 大家さんがマイクロ法人と賃貸借契約をしてくれない
既に役員が居住している物件を社宅にする場合、物件の賃借人の名義をマイクロ法人に変更する旨の交渉を大家さん又は管理会社としなければなりません。しかし、マイクロ法人を設立してから1~2年しか経過していない場合、問答無用で断られる可能性があります。
これは、管理会社や大家さんの審査基準次第なのですが、審査時に決算書を1~2年求められることが一般的なようです。大家さんから見れば、設立してまだ1~2年未満の会社は信用がないのです。また、設立から1~2年経過したからといって、業績次第では断られる可能性もあります。もし、社宅スキームを導入しようとしているのならば、導入直前の事業年度は利益と内部留保を多めにした方がいいでしょう。
大家さんが賃借人の名義変更に同意してくれない場合は、この社宅スキームは使えません。事前に管理会社か大家さんに審査基準を口頭ベースでいいので教えてもらった方がいいでしょう。社宅スキームをあてにしてマイクロ法人を設立したものの、設立した後で名義変更まで2年かかると知っても遅いからです。
落とし穴2 名義変更時の初期費用が高い場合もある
賃借人を個人から法人に名義変更をする際、管理会社によっては数万円の名義変更手数料がかかる場合あります。その他、保証会社が必須の場合、名義変更時に改めて初回保証手数料として、家賃の0.5ヶ月~1か月分相当の保証料がかかる場合があります。仮に家賃が月15万円とした場合の初期費用は以下です。
費用の相場 | 最低のケース | 最高のケース | |
名義変更手数料 | 数万円 | 0万円 | 9万円 |
初回保証手数料 | 0.5~1か月分 | 8万円 | 15万円 |
前払い家賃 | 1~2か月分 | 15万円 | 30万円 |
名義変更時初回出費合計 | 23万円 | 54万円 |
初期費用は安ければ数万円ですみますが、高ければ50万円以上かかる場合もあります。条件は物件次第で変わりますので、管理会社に事前に確認した方がいいでしょう。ただし、初期費用は高くとも、一般的には節税効果の方が大きいので、初期費用を理由に社宅化を否定する必要はないと思います。いざ契約という段になって「資金がない」ということがないようにキャッシュに余裕を持っておきましょう。
落とし穴3 親族を連帯保証人にして、お金よりも大事なものを失う
落とし穴2でも言及しましたが、役員社宅を法人契約する場合は保証会社に支払う保証料が高いケースがあります。保証料がもったいないからといって、保証会社の代わりに親族を連帯保証人にすることはやめた方がいいでしょう。
親族が士業や税務関係者ならともかく、一般の人が役員社宅による節税の話を聞いた場合、どう考えるでしょうか。「何か脱税など悪いことをやろうとしているのではないか。」「面倒なことに巻き込まれたくない。」と考えるのが普通です。税務上認められている問題ない方法だと説明の上、説得できればいいですが、なかなか理解してもらえないことが多いのではないでしょうか。にもかかわらず、強硬に連帯保証人になることをお願いすれば、仮に連帯保証人なってもらったとしても不信感が残る可能性があります。
たしかに、保証料は高いので節約したい気持ちは分かりますが、親族と関係が悪化するのを防ぐための費用だと考えれば安いものです。十数万円のお金は働けば取り戻すことができますが、一度壊れた親族の信頼を取り戻すのは容易ではないでしょう。
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